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「喋ってないで勉強しなさい」
「仕事中なんだから、口じゃなくて手を動かせ」
私達はこれまで、雑談は”良くないもの”として育って来ました。
学校でも職場でも、雑談は勉強や業務を妨げて生産性を下げる一因だとする環境の中で育って来た人がほとんどだと思います。
しかし近年の研究により、
会話や雑談が生産性を上げる大きな要因なのでは?というデータが多く見受けられるようになって来ました。
今回は
- 雑談が生産性を上げた研究の紹介
- 考察:なぜ雑談で生産性が上がるのか
- どうやって会話や雑談を増やすのか?
以上の内容をご紹介します。
雑談が生産性を上げた研究の紹介
会話量が増えると契約受注率が上がった
受注は、意外なことと相関していた。それは、休憩所での会話の「活発度」である。休憩時間における会話のとき身体運動が活発な日は受注率が高く、活発でない日は受注率が低いのである
引用:矢野 和男著 データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則 (草思社文庫)
世界的にも有名な、ビックデータ研究の第一人者である矢野和男さんの著書から引用をさせて頂きましたが、
日本のコールセンターで行った、仕事中の活動量を測るウェアラブル端末を使用した実験で分かった研究結果です。移動や手の動きがどれくらいあるのかなどを細かく記録する端末を使い、従業員のデータを集めました。
コールセンターの受注率が何と相関しているのか?という調査をした所、出勤者のスキルやスタッフの性格と相関関係は見られず、休憩所で会話がどれだけ活発になされているのかが受注率と関係していた事が分かりました。
でも、、、
「契約が取れて気分が良かったから会話が増えたんじゃない?」
とも考えられますよね?
しかしそこはビックデータの世界的な第一人者。しっかりと対策されていて、
意図的に雑談・会話を増やしたらどうなるか?という実験もされています。
休憩時間の活発さを向上する施策として、同世代の4人のチームで休憩を同時にとるようにした。その結果、休憩中の活発度が10%以上向上し、さらにその結果、受注率が13%向上した。
引用:矢野 和男著 データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則 (草思社文庫)
会話が増えるような仕組みを使ったら、受注率が13%も向上したという結果が!
これにより受注が増えて気分が良くなったから会話が増えたのではなく、会話が増えたから受注が増えた事が証明されました。
15分の休憩で年間18万ドル(約2,000万円)/人 生産性アップ
続いてはアメリカ企業での調査結果。
アメリカでモルガン・スタンレーに次いで2番目の規模を誇るバンク・オブ・アメリカで行われた実験です。現場では仕事中に私語を無くし、生産性向上を目指して来たそうですが、調査により全く違う結果が現れたといいます。
かつてバンク・オブ・アメリカでは、コールセンターの4チーム、約80人にセンサーを携帯させ、約4週間にわたってデータを収集しました。
中略
コールセンターの運営を最適化するには、従業員同士のコミュニケーションを促す交流の機会が必要で、シフトに穴をあけないことより、そろって休憩をとることのほうが重要でした。実際、同じチームのメンバーが同じタイミングで1日15分のコーヒー休憩を取れるようにしたところ、生産性を高める交流が自然に行われるようになり、年間1500万ドルもの運営コストを削減できたといいます。
引用:日本の人事部 HRテクノロジー より
前述の内容と重なるような結果になっていますが、
今回注目したいのは生産性が上がった事による大幅なコスト削減効果!
80人で年間1500万ドルって事は、一人あたり18万ドル以上。
日本円だと1人で年間2,000万円!!
外資金融企業だからこそではありますが、これだけの数字が出ると会話を増やさざるを得ませんね・・・
考察:なぜ雑談で生産性が上がるのか
他にも会話・雑談数の増加による効果は見受けられますが、なぜ雑談により効果が上がったのかを考察していきます。
心理的安全性の向上
まずは心理的安全性が上がったからかな?って考えです。
そもそも心理的安全性って何なのか?というと、グーグルが4年間の調査で導き出した生産性や成功するチーム作りで最も重要だとする要素です。
言いたいことも言えず、ビクビクしながら仕事をするのではなく、上司と部下、チームそれぞれが信頼し合う事が生産性を上げモチベーションも向上し成功するチームという考え方で、グーグルが提唱して以来、日本でも多くの企業や組織で導入され始めています。
今回の会話や雑談という点も一緒で、堅苦しい仕事の話ばかりだと信頼って中々生まれないものなんです。
心理学の視点で言うと「自己開示」をした相手に対して信頼度・親密度が上がるのですが、雑談によりお互いの考え方や個人的な側面を知る・自分が話す事で信頼が増し、心理的安全性も向上したのではないかと考えられます。
ワーキングメモリーの解放
2つ目はワーキングメモリーが解放されて頭がリセットされ、集中力も継続出来るようになったのでは?と考えます。
ワーキングメモリーとは、暗算をする時に一時的に頭の中に数字を記憶する時のアレです。経験がある人も多いと思うのですが、緊張した時や焦った時に簡単な計算も出来なくなる事ありませんか?そんな時はワーキングメモリーが一杯で計算する場所が残っていないから出来なくなっているんです。PCのメモリと同じようなイメージですね。
で、今回の内容に合わせると、仕事が煮詰まってくると業務の事でワーキングメモリーが圧迫されます。
ワーキングメモリーをリセットする方法は3つで
- 不安を発散する
- 別の思考をする
- 思考を止める(寝る・瞑想など)
今回は会話や雑談により、1と2が行われて頭がリセットされ集中力が回復したのでは?と考えられます。
1.については、メンタル改善方法とか緊張を無くす方法として不安を書き出す事が行われますが、会話や雑談に含まれる愚痴なんかが同様の効果を発揮して思考がスッキリしたのだと思われます。
2.の別の思考をすると言う点でも会話や雑談はまさにピッタリで、仕事の話から逸れる事でワーキングメモリーがリセットされて休憩後の集中力が回復したと考えるのが良さそうです。
どうやって会話や雑談を増やすのか?
会話や雑談が与える影響について一通りご紹介をしてきましたが、では具体的にどうやって増やせばいいのでしょうか?
業種により出来る出来ないはあると思いますが、ご参考にして頂ければ幸いです。
休憩時間を見直してみよう
休憩時間の仕組みが、同僚と触れ合えるようになっているでしょうか。シフト制だったり昼当番をしたりと障害はあるかもしれませんが、
同僚と関わる機会が増える休憩の仕組みを考えるのが有効です。
上記の研究でも休憩を一斉に取ったり、チーム毎にランチ会を設ける事で大きな結果が現れているので、仕組みとして変えられるのであれば直ぐにでも取り入れましょう!
昼の1時間でなく、コーヒーやおやつタイムを10分入れるとかでも効果はあるので、それぞれの職場環境に合った方法を見つけて頂ければと思います。
席替えをしてみる
ずーっと私語ばかりしているのは確かに良くないですが、チーム個々が孤立しているようでは会話もしにくいですよね。
席替えをしてみることで自然と会話が増え、心理的安全性も高まり信頼しあえるチーム作りになるかもしれません。
人は環境によって多くの行動が決められています。通勤途中にスタバがあれば、入ってしまう習慣が勝手についたり等、環境による影響はとても大きいです。
席の配置を考え直す事で自然とコミュニケーションが取れるようになれば心理的距離も近くなり、チームワークが上がり業績アップにも繋がるはずです。
会話を許容できる環境になっているか?
制度として休憩時間を確保するのも大切ですが、職場の雰囲気が悪く張り詰めた雰囲気になっているようでは非常に良くないです。会話が出来ないだけでなく心理的安全性の観点でも悪いですし、個々のモチベーションも低く、おそらく離職率も高い職場だと考えられます。
パワハラや怒号が横行している環境であれば、転職した方がましですが、
そこまでひどくなくとも、「私語は悪だ」と考えている人達が大半だと思います。
本記事でご紹介した内容の理解から必要となりますが、和やかな雰囲気や、自然・緑をオフィスに取り入れて少しでもリラックス出来る環境を作る事をオススメします。
「軍隊式」で缶詰にされる強制的な労働は1つも良いことがありませんので、精神状態が安定しモチベーションを持って仕事をするための1手段として、会話・雑談を取り入れてみてはいかがでしょうか。